人材育成 /次世代リーダー育成塾 <第5回> | どっこいしょニッポン

集え、志し高き後継者たち!
農場経営に本格的な経営学を取り入れよう

次世代の牧場経営をリードしていく皆さんを応援するため、経営の「武器」になる実践的な経営学を、6回にわたってお届けする特別企画。第5回のテーマは、牧場経営の未来のために必要不可欠な『人材育成』。経営のプロフェッショナル、タナベ経営の深澤さんにお話を伺います。

講師紹介

深澤 宏

酪農、肥育農家向け経営学セミナー「次世代リーダー育成塾」塾長、タナベ経営コンサルタント。経営のあらゆる課題解決において実績をあげている。売上げアップ、利益アップ、赤字脱却、人材育成など幅広い成果を上げ続けており、様々な業種での経験を活かしたコンサルティングを武器とする。

人材の個性を伸ばすには?

今回のテーマは『人材育成』です。“人”は畜産業に限らず企業にとって大切な存在です。企業が健全かどうかは、人に左右されるといっても過言ではありません。しかし、人には個性というものがあります。その個性を活かし、企業にとって戦力に変化させていくことが大事なのです。では、具体的にどうすれば良いのでしょうか。

人材育成は採用から始まる

すでに働いている社員の育成方法も大切ですが、まずは、新規採用における注意事項をお話します。というのも、一緒にビジョンの実現に向けチャレンジする新しい仲間を迎え、育てることが一番難しいからです。

面接でやってはいけないこと

新卒、中途採用いずれも、採用しようと思ったら必ず面接をしますよね。面接は、履歴書、中途入社の場合は職務経歴書に基づいて行われるのが一般的です。
しかし、この履歴書と職務経歴書は全く意味がないと言っても良いです。というのも、面接をする前から、最終面接官(社長である場合が多い)に「悪い思い込み」ができてしまい、面接の効果が半減してしまうからです。
採用する側は、人をしっかり面接で見て、自分たちの会社でやっていけるかの判断をしていかなければなりません。面接では、個性を重視すべきなのです。そして、一度入社が決まった人たちと会社は生涯お付き合いできる状態にしていかなければなりません。その状態になれるか見極めることが面接において重要なのです。

タナベ経営が考えるベストな面接方法

どのように面接を進めていけば良いのか、ご説明しますね。

まず、面接官が、応募者に質問をする前に自分の会社がどんな会社なのかの説明を行います。企業理念、ビジョン、どういう人材とともに歩んでいきたいかなどの思いをしっかり伝えます。その後、説明した内容を、応募者がどう感じたのかを質問しましょう。

このとき、きちんと面接官の目をみて話をしているか?はきはき受け答えをしているか?なんてことを気にする必要はありません。緊張しているので、上手な対応はできないのが当たり前です。それよりも、面接は、応募者の「素の姿」をしっかり企業側が把握して、入社後の教育により順応できるか、現在の従業員とうまくやっていけるか、を判断することが大事なのです。誤解を恐れずにいえば、過去の実績なんてどうでもよいのです。

「内定を出したから」と油断は禁物!

面接をして、採用の内定を出したからといって、終わりではありません。基本は『逃げていくもの後を追わず』です。内定後に辞退する人がいないように、入社前から食事会をする企業があります。実はこれも意味がありません。

では、どうすれば良い人材が最後まで残ってくれるか考えてみましょう。

内定後、入社するまでの間でインターンを行うことをオススメします。

そこで、内定者に判断してもらえば良いのです。そこで辞退してしまう人は、仮に無理に入社してもらったとしても、条件が良い会社があれば、すぐに辞めてしまいます。また、もしインターンをして入社までの間に誰も残らなかったとしたら、その会社に魅力がない、ということになります。そうなると、その会社は採用の前に会社自体の魅力づくりに専念しなければならないことが分かるからです。

人材育成に欠かせない2つのポイント

新たに採用を行う際に大事な点は上記に挙げた通りです。最後に、新たに社員が入社した時、すでに働いている社員たちも活き活きと働ける環境づくりについてお話します。

人材育成には、大きく2つのポイントがあります。

一つ目は、『企業理念』や『ビジョン』、『方針』をしっかりと従業員に説明し、共感してもらうこと、二つ目は、社員のレベルや、職歴に合わせた教育内容(カリキュラムづくり)を明確にしておくことです。

詳しく説明しましょう。

①『企業理念』や『ビジョン』、『方針』をしっかりと従業員に説明し、共感してもらう

会社は、どんな思いを持って、どんなことを使命として存在しているのかを社員に明確に宣言し、共感してもらわなければなりません。共感してもらうためは、経営トップが自らの声で、思いを込めて説明することが大切です。社員は、トップがどれだけ真剣に考えているかどうかを感じるものです。経営者が本気であればその思いは必ず伝わります。

次に大切なのは、コミュニケーションです。第3回でもお話しましたが、コミュニケーションの基本は、『FACE to FACE』=顔を突き合わせて話をすることです。話し合う時間の長さではありません。1分でも毎日顔を突き合わせて話をする機会をつくるのが重要なのです。コミュニケーションによる人間関係づくりは、顔を突き合わせて会話する回数に比例して関係性が深まっていきます。

②それぞれの社員に合わせたカリキュラム(教育体系表)づくり

新入社員か中途社員のほかに、係長、課長、部長などの階層別、職歴(1年目、3年目、5年目など)によって、「技能編」「マネジメント編」などの異なるカリキュラムをつくることをお勧めします。これをタナベ経営では、教育体系表と読んでいます。
教育体系は、1回作ればずっとそのままで良いというものではなく、企業規模、ビジョンに合わせて変えていくものです。この体系がしっかりしている会社は、従業員の定着率がアップし、人材育成がうまく進み、短い時間でプロとよばれるレベルにまで成長します。ここでは、教育体系表の一例をあげておくのでぜひ参考にしていただければと思います。

このように、一覧をまずは作成し、それぞれの個人に必要なところを割り当てて、管理していく方法をとるとスムーズです。これを1年ごとに改訂していくと全体をしっかり管理できていると言えます。
実際にここまでしっかり管理できている中小の畜産業者はほぼいないと思います。だからこそ、ここまでやりきれば他の農家さんと差が生まれ、人材育成をきちんと行なっていることを強烈にアピールできます。そして採用が難しい現代でも、働きたい職場として選んでもらえるようになるのです。

オンリー1、ナンバー1の牧場を目指して

人材育成は経営者、従業員にとって大切なことです。「この牧場で働けて良かった!」という気持ちになってもらうには、教育体系を作つことのほかに、C(チェック)A(アドバイス)H(ヘルプ)F(フォロー)がうまく機能する環境を作ることが重要です。

チェックは、上司の指示に対して部下がきちんと指示通りに行動しているかを確認することです。そこで、指示通りに行動できていないと上司が判断したら、次のアドバイスで、助言します。それでも行動できない時には、ヘルプで手取り足取り教えます。すると、その場では指示通りに行動できるようになります。しかし、完全に自分の仕事として動けるようになるには、少し手を放してやってもらう必要があります。これがフォローになります。こういった風土が定着した企業は、働きやすく、また優秀な人材がスピーディーに育つ傾向が強いです。

ぜひ、上記の参考にしながら人材育成を行い、他の牧場にはないオンリー1、ナンバー1の牧場を目指していただければと思います。

さて、第5回の授業はいかがでしたでしょうか?
ご意見ご感想、ご質問はぜひこちらまで声をお寄せください。
ご質問については、「どっこいしょニッポン」のfacebookページで
ピックアップしながら随時お答えしていきます。
それでは次回をお楽しみに!

この記事を書いた人深澤 宏

タナベ経営コンサルタント

酪農、肥育農家向け経営学セミナー「次世代リーダー育成塾」塾長、タナベ経営コンサルタント。経営のあらゆる課題解決において実績をあげている。売上げアップ、利益アップ、赤字脱却、人材育成など幅広い成果を上げ続けており、様々な業種での経験を活かしたコンサルティングを武器とする。

特集バックナンバー

集え、志し高き後継者たち! 農場経営に本格的な経営学を取り入れよう

この記事が気に入ったら
いいねしよう!

新着記事をfacebookでお届けします

関連記事