アクションプランの設計 /次世代リーダー育成塾 <最終回>
No.328
はたらく
特集 集え、志し高き後継者たち! 農場経営に本格的な経営学を取り入れよう
次世代の牧場経営をリードしていく皆さんを応援するため、経営の「武器」になる実践的な経営学を、6回にわたってお届けする特別企画。第4回となる今回のテーマは、『ビジネス係数・資金繰り』。さあ、今回も経営のプロフェッショナル深澤さんの講義が始まります。
酪農、肥育農家向け経営学セミナー「次世代リーダー育成塾」塾長、タナベ経営コンサルタント。経営のあらゆる課題解決において実績をあげている。売上げアップ、利益アップ、赤字脱却、人材育成など幅広い成果を上げ続けており、様々な業種での経験を活かしたコンサルティングを武器とする。
経営には、数字が必須。
と、書き始めましたが、皆さんはピンときましたか?ピンときた方は、この後の文章がすんなり頭に入ってくると思います。ピンとこられなかった方もぜひ、最後まで読んでいただければと思います。
では本題に入ります。会社を倒産させることなく、仕事を長く続けていくためには、お金(現金)がなくならない状態を作り出すことが重要です。そのためには、『損益計算書』と『貸借対照表』と『資金繰り表』という3つの表を読めるようにしておかなくてはいけません。見られるようにというのは、表を見て「何が数字の上で問題なのか」がわかるレベルになるということです。
では、順を追って説明していきましょう。
損益計算書(Profit&Loss Statement:P/L)とは、1か月間、もしくは1年間の会社の経営成績を表したものです。仕入れにいくらかかって、それをいくらで販売して、経費にどれくらいかかって、最終的にいくら利益が残ったのか。この表を見れば会社の業績がどうなっているのかが分かります。
①売上高・・・・・商品、製品を販売した時の収入
②売上原価・・・・仕入にかかったお金や製造するのにかかったお金や商品、製品の在庫
③売上総利益・・・粗利益ともいうもので、売上高から売上原価を差し引いたもので会社のおおよその利益
④販売費及び一般管理費・・・売上をあげるための費用や会社を管理するための費用
⑤営業利益・・・・・・・・・汗水たらして得た利益。売上総利益から販売費及び一般管理費を差し引いたもの
⑥営業外損益・・・・・・・・財務活動や投資活動などの本来の仕事以外の活動で発生した損益
⑦経常利益・・・・・・・・・会社が事業全体から得た利益。会社の経営力を把握できる。
⑧特別損益・・・・・・・・・借入利息や預金の利息など臨時的に発生した収益と費用。
⑨税引前当期純利益・・・・・税金を支払う前の利益。
⑩法人税等・・・・・・・・・法人税や住民税等の税金支払い。
⑪当期純利益・・・・・・・・1年間(当期という)の総合的な経営成績。最終的に会社に残るお金のこと。
なお、上記②、④、⑥、⑧には、更に細かい項目があります。その細かい項目を『勘定科目』といいます。詳しくはここでは割愛しますので書籍などでご確認ください。
まどうでしょう。それぞれの項目があなたの会社では何に該当するかわかりましたか?ずは、この構成の意味をおおよそ理解できれば、損益計算書は理解できたといっても良いでしょう。
貸借対照表(Balance Sheet:B/S)とは、ある時点(○月△日時点)における会社の財政状態を表したものです。項目ごとに金額が表示されているので、会社の資産や負債といった、知りたいことがすぐに分かる作りになっています。
貸借対照表は、上記の図を見ても分かるように、3つの項目(資産、負債、純資産)から成り立っています。では、その3つの項目について細かく見ていきましょう。
①資産
資産とは、会社が所有し、会社の運営に役立つ財産や、債権(請求)を表したものです。これは、さらに『流動資産』、『固定資産』、『繰延資産』に分かれます。
1 流動資産・・・現金化される時期が1年以内の資産
2 固定資産・・・現金化される時期が1年を超える資産
3 繰延資産・・・長期間にわたる費用が配分されたもの
②負債
負債とは、後日、支払う義務のあるお金(債務)を表したものです。これは、さらに『流動負債』と『固定負債』に分かれます。
1 流動負債・・・1年以内に返済する必要のある債務
2 固定負債・・・1年を超える長期間で返済していく債務
なお、負債は、別名で『他人資本』とも呼ばれます。簡単に言うと借金なので、『他人のお金』という意味です。
③純資産
純資産とは、資産から負債を差し引いたものであり、会社が所有する正味の財産を表したものです。これは、さらに『株主資本』、『評価・換算差額等』、『新株予約権』に分かれます。
1 株主資本・・・会社の出資額(資本金)と経営活動によって生まれた利益。
2 評価・換算差額等・・売買目的でない株式の評価(創業時と現在の株価の差額)を記載。
3 新株予約権・・・会社が発行する株式をあらかじめ決められた価格で取得する権利
今説明した内容は、貸借対照表の構成です。こちらにプラスして、さらに細かな科目があります。その細かい科目については、今説明してもこんがらがってしまいますからまた別の機会に。
最後に、資金繰り表について説明しましょう。
資金繰り表とは、現金の流れ(人間でいうと血液の流れ)を捉え、流れが止まらないように管理するための表です。人は血が流れなければ死んでしまいます。会社も現金が流れなければ倒産してしまうのです。倒産させないために現金がいつに入ってきて、いつに出ていくのかを表に表したものを言います。
先ほど説明した損益計算書上、黒字(=当期利益がプラスの数字になっている)であっても現金が手元になく、支払いが滞った時は会社は倒産してしまいます。イメージしやすいようにもう少し詳しく説明しましょう。
例えば、皆さんが一生懸命作った品物を売った際、損益計算書上では、売上高の項目に品物が売れた金額が表示されます。しかし、ここでは注意すべき点があります。
お客さん全員が、品物を現金で買ってくれれば良いのですが、そうでない場合があるのです。買いたい品物が目の前にあっても現金の用意がなかったお客さんは、一定期間支払いを延長できる受取手形を発行して購入するという手段に出ることがあります。その場合、仮に2か月の受取手形を発行したとしましょう。そうすると、現金となって手元にくるのは2か月後ということになります。つまり、損益計算書に記載した2か月後にしか現金としては入ってこないのです。
しかし、品物の原料は、品物を作ったその月に現金で支払いが行われるとしたらどうでしょう。支払いの分だけ貯金しているか、支払うお金がないのなら誰かから借りて支払わなければなりません。お客さんの受取手形の支払い時期に合わせて、原料の支払いも2か月待ってくれれば良いのですが、世の中そんなに甘くはありませんよね。支払うお金がなく、誰からも借りられない状況が生じた時に、会社は倒産するのです。お金がなくならないように手回しする手段こそが、資金繰り表なのです。
今回は「ビジネス計数・資金繰り」というテーマでお届けしてきました。それぞれの数字が経営をする上で大切なのが分かっていただけたと思います。実際には、損益計算書と貸借対照表の数字を分析して、数字上、自分達たちの会社がどういう状況で、どのように対応していかなければならないかを見つけだしていかなければなりません。ここではまずはその基本をしっかり理解していただけたらと思います。
さて、第4回の授業はいかがでしたでしょうか?
ご意見ご感想、ご質問はぜひこちらまで声をお寄せください。
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ピックアップしながら随時お答えしていきます。
それでは次回をお楽しみに!