アクションプランの設計 /次世代リーダー育成塾 <最終回>
No.328
はたらく
特集 集え、志し高き後継者たち! 農場経営に本格的な経営学を取り入れよう
どっこいしょニッポンでは、次世代の牧場経営をリードしていく皆さんを応援するため、経営の「武器」になる実践的な経営学を、これから6回にわたって伝授していきます。第2回の今回のテーマは、『企業経営と後継者の使命』。経営のプロフェッショナル、タナベ経営の深澤さんの講義のはじまりです。
酪農、肥育農家向け経営学セミナー「次世代リーダー育成塾」塾長、タナベ経営コンサルタント。経営のあらゆる課題解決において実績をあげている。売上げアップ、利益アップ、赤字脱却、人材育成など幅広い成果を上げ続けており、様々な業種での経験を活かしたコンサルティングを武器とする。
企業経営は、今回の皆さんで言えば、畜産経営であります。経営という言葉には深い意味があります。その意味は、倒産・破産させてはいけない!ということです。だから倒産・破産させないために『経営資源』をうまく活用することが必須となります。
初めてだという方もいらっしゃると思いますので、丁寧にご説明していきます。
私たちタナベ経営では、経営資源をこのように定義しています。
ヒトは言うまでもなく、経営者を含めた従業員全員(その家族も今回は入れましょう)です。そのヒトの管理をしっかりして、従業員も家族も満足いく理想の状況を作り上げていくことが大切であります。
モノは設備であります。効率よく作業をすすめていく為には、ヒトに代わって機械が働いてくれる状況をつくっていくことです。
これには、働く環境(建屋など)も含めます。労働環境を整備して、楽に、活き活きと、そしてストレスフリーな状況を作りだすことも現在では重要なことでしょう。
カネは、財務力の強化が必要だということです。常にリスクを考えて、そのリスクに耐えられる蓄えをきちんとしておくことです。それだけでなく、設備投資をするためのお金もあります。日本で仕事をしていくからには、カネが必需であります。個人経営に近い方でも、売上は、自分が苦労して築いて得たものだからといって、自由に使ってはいけません。自由に使うことを「公私混同」と言いますが、それに慣れてしまうと中々脱却できなくなります。そして、最終的に破産する可能性が高くなっていきます。よってカネの管理が大切なのです。
情報は、マーケットととらえて頂いても良いです。マーケットとは、自分達が今やろうとしていることが社会に受け入れられるかどうかを調べて答えを出したり、今進めている仕事が、世の中に受け入れられているのかの確信を持つために調査して答えを出すことです。常に仕事に没頭して、周りの動きに疎い状況が続くと良いことがありません。時代遅れのまま、効率の悪い仕事をしている可能性があるからです。経営は、『不易と流行』のバランスが大切なのです。『不易と流行』を少し説明しますと、『不易』は変えてはいけないこと、『流行』は時代の流れに乗ることです。
購買は、分かりやすく表現すると仕入れです。
仕入れのパートナー(業者様)から経営に必要な材料(干し草の原料、電気、家畜の薬など)を買う行動を購買と言います。この購買も高いものを買うより、同じものであればより安く購入しなければ利益を確保することが難しくなります。だからといって、仕入れのパートナー(業者様)を買い叩きすぎてもいけません。そのような状況の中、うまく買うための買い方を構築していかねばならないのです。
経営者は今、説明してきた『経営資源』をうまくコントロールして、売上を伸ばし利益を増やす方法を自ら常に意識して、築いていかなければなりません。それをやらずに日々作業だけこなしている状況が続けば、事業の発展はありません。
ここからが『後継者の使命』という本題に入ります。
『後継者の使命』を一言で言うと? ちょっと考えてみてください。
このような状況を作りだすためには、大前提として、現場に出ることが大切です。現場経験を積むことにより、仕事の中身を把握でき、従業員の苦労も理解できるようになるからです。また、そうすることで前任者の苦労も実感できます。きっと前任者への感謝の気持ちも生まれてくるはずです。事務所で事務作業ばかりしたり、いきなり社長や役員になって対外関係者の仕事ばかりするようなことをしてはいけないと私は思います。私の経験上、そのような方がその後トップになっても、従業員から信頼されることはないでしょう。
現場経験を積みながら次に実行してほしいことは、「自身が経営者になったら、この事業をどうしていきたいか?」を想像することです。それが後にビジョンへと確立されていくのです。この想像している内容を、前任者と普段話程度で構いませんので語り合っておくのが良いでしょう。そうすることで、自分がトップになった時に自分の経営がしやすくなります。ほとんどは、このような行動をとってないが故に、経営トップになってもいつまでも自分の実権が握れない状況が続くことになります。皆さんにはそうなってほしくはありません。まずは前述のことが確実にできていれば承継はスムーズになることでしょう。
最初にすべきことである「自分の想い(志)」を
確立することはクリアしたとしましょう。
しかし想いだけでは、経営はうまくいきません。
次に必要なのは『人間関係』です。既存の仲間は大事にしてください。その他に、前任者から引き継いだ仲間も維持していくよう努力すること、新しい仲間もどんどん増やしていくことです。ここで注意してほしいのは、新しい仲間の作り方です。むやみやたらに新しい仲間をつくるのはよくありません。自分の思いに共感してくれる新しい仲間を作ることが重要です。そうすることで色々押し寄せてくる苦難に仲間が力になってくれるのです。
そして、お金の管理は外せません。お金は、自由に使えるものと使えないものをしっかり区分けをしておきましょう。そして自由に使えないお金=『戦略資金』は事業発展のために使っていきます。『戦略資金』の使い方はきちんと計画を立てておくことと、事業に関わる関係者の了解を得ておくことも重要になります。お金のコントロールがきちんとできるようになることで、判断力も身についてきます。
最後に『強固な精神力』をつけること。くよくよ悩みすぎてストレスを溜め身体に支障をきたすようでは経営はできないからです。私は、精神力が乏しく、経営に支障をきたしてきた企業を沢山見てきています。経営者は、身も心も元気でなくてはならないのです。特に『心』です。そのためには、適度な量(ブラック企業にならない程度の忙しい状況)の仕事をすることをお勧めします。自分に余計なことを考える暇を与えない!ようにするためです。それから嫌な事を忘れることができる大好きな趣味を持ち、週に1回は行動できる状況を持つこと。何でも相談できる人を持つこと。次に何も考えず自然に任せる1日をつくること(月1回)。最後に仕事の中で、小さな成功体験を沢山作っていくことです。
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今回は、『企業経営と後継者の使命』ということでお話してきました。まとめますと、『企業経営』は、経営の法則を理解して経営資源をしっかりコントロールできる仕組みや体制を築いていくことが大切です。
『後継者の使命』とは前任者が築き上げてきた事業をきちんと承継し、つぶさない状況を作りだし、より良い状況を確立し、維持していくこと。そんな使命を果たすために「現場経験を積み」「ビジョンを描き、全員と共有し」「強固な人間関係を築き」「お金の大切さを知り」「強固な精神力をつけること」に注力していってください。
経営者は、自分の命をかけて仕事をしていかねばなりません。命をかけるとは、決して大げさに言っているのではなく、事業に失敗したら、何もかも失うのですから。
しかし、経営の原理原則を真面目に取り組んでいけば、失敗は絶対にしません。
さて、第2回の授業はいかがでしたでしょうか?
ご意見ご感想、ご質問はぜひこちらまで声をお寄せください。
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ピックアップしながら随時お答えしていきます。
それでは次回をお楽しみに!
WEBでは伝えきれない農場経営の真髄を、講義と演習を交えてレクチャー。
今年も人数限定で特別講義を開催します。
「今の農場経営に満足していない」、「やる気はあるが、経営ビジョンが曖昧でどのように良くすれば良いか分からない」・・・。そんな悩みを抱える経営者や、経営幹幹部の方々を対象に「次世代リーダー育成塾」を開催します。
期間は2019年10月から6ヶ月。全6回。毎月、帯広に志を同じくする仲間が集い、課題を共有しながら、切磋琢磨しながら、これからの畜産をリードしていく経営者へと駆け登ってください。
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