女性獣医師の仕事と働き方に密着! | どっこいしょニッポン

女性獣医師の仕事と働き方に密着!

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「獣医師って、重労働で女性には負担が大きいのでは!?」

そう思っている方は多いかもしれません。

しかし、そんなイメージを女性獣医師さんにぶつけてみると、

「それは誤解です。むしろ女性の方が向いている点もたくさんあるんですよ」と、意外な答えが返ってきました。

そこで今回は、現役の女性獣医師の上松瑞穂先生と中山俊江先生に、女性獣医師の仕事内容や働き方についてお話を伺いました。

 

まったくタイプの異なる2人。それでも牛を愛する気持ちは同じ

みやざき北部センター 北部診療所 獣医師 中山俊江先生

▲NOSAI(農業共済組合)みやざき 北部センター 北部診療所 獣医師 中山俊江先生

今回往診にも同行させていただいた中山先生は、牛専門の獣医師となって20年以上のベテラン個体診療といって牛1頭ごとの病気を治療するのが仕事で、畜産農家のもとへ出向き、1日30頭近くを診察しています。

車に積んだ、中山先生の診療道具

▲車に積んだ、中山先生の診療道具

始業時間より早い朝7時に出勤して取り掛かるのは、診療車に搭載する薬の補充や器具機材の消毒、往診先の調整など。防疫のため牛舎を訪問するつど作業着を着替えるので、山積みになった洗濯物を畳むのも仕事です。

牛をみる中山先生

午前は畜産農家へ出向き往診、午後は手術や急患への対応、指名を受けた農家への訪問などスケジュールはみっちり。

担当エリアでは約150軒の農家を5人の獣医師で担当しています。夜間と休日の勤務も5分の1ですから、プライベートな時間は確保できています」

「畜ガールズ」副会長で、NOSAIみやざき生産獣医療課課長の上松瑞穂先生

▲「畜ガールズ」副会長で、NOSAIみやざき生産獣医療課課長の上松瑞穂先生

中山先生と同じNOSAI所属でも、一般的な獣医師と一線を画すのが「畜ガールズ」で副会長を務める上松瑞穂先生。「畜産農家の実益をあげること」に特化したコンサルタント業に力を注いでいます

「これまで共済組合の主な役割は産業動物の保障や治療でしたが、そもそも病気やケガをさせないことが一番じゃないかと考えたんです」と、上松先生。

「下痢や風邪を起こさないためにはこうしたら良い」「今年はこういうウイルスが流行るかもしれないから対策を」など予防医学の観点から巡回指導しています。

健康な子牛を短期間で産んでくれることが収益に直結するため、コンサルを求めるニーズは高く、立ち上げから3年あまりで契約数は1万4千頭に

「この仕組みが広がれば、人員不足の診療所は売り上げを人件費に充てられますし、計画的な診療プランを立てられるので人員配置の融通も利く。ライフステージに応じた働き方をチョイスできるようになります」

獣医師のやりがい向上と働き方改革へ向けて、邁進しているのです。

 

▶▶上松先生が副会長を務める「畜ガールズ」の活動についてはこちらをお読みください。
※「産業動物業界への女性進出!先陣を切る、「畜ガールズ」の活動に迫る」記事へのリンクを設置

 

中山先生の往診に同行!大切なのは、畜主との信頼関係。母胎に芽吹いた小さな生命

今回の取材では、そんな中山先生の往診へ同行させていただきました。

この日行われたのは、メス牛が妊娠しているかの判定や、分娩後の卵巣子宮確認。牛の状態を確認して、背後へ回ると躊躇なく腕を肛門の中へブスッ! 「子宮や卵巣の状態を診ています」とのこと。

一頭ごとに体内を診断していく中山先生

一頭ごとに体内を診断していく中山先生。

一頭ごとに体内を診断していく中山先生。 ▲診断しながら繁殖検診に丁寧に記載していく

▲診断しながら繁殖検診に丁寧に記載していく

しばらくすると「見てください!」と手招きされ、超音波診断装置をのぞくと…。

エコー写真

エコーに映り込む、小さな丸い影。「妊娠していますよ。おめでとうございます」。中山先生が声をかけると、畜主さんは安堵の表情に。

牛の状態に応じてホルモン剤を投与し、痩せている牛には餌の配合を変えるよう指導。

細やかなケアをしてくださり、丁寧で優しい先生です」と畜主さん。

先代から付き合いがあるとのことで、中山先生に対する信頼の高さがうかがえました。

農家さんと中山先生

▲農家さんと中山先生

中山先生が心掛けているのは、「牛だけを見ない」こと。農場が清掃されているか、餌や餌箱はどうなっているか、異常の見つかった牛以外の牛たちはどういう状態か。

病気のほとんどが餌や環境に起因していますから、全体を観察しつつ状態の悪い牛にクローズアップして、飼育環境の改善アドバイスなどを行います

 

回り道して気づいた獣医師への想い。女性こそ、この仕事に向いている

牛の診察をする中山先生

獣医系大学へ入学した当初は「畜産の獣医がいることさえ知らなかった」と語る中山先生。

「大学の実習で牛と触れ合ううちに、どんどん惹かれて。牧歌的な風景に愛着があったのかもしれません」

産業動物の獣医師を志したものの就職先がなく、ワクチン開発の研究者として製薬会社へ就職。しかし半年ほどが経った頃、「私が本当にやりたいのはこの仕事じゃない、と決心がついたんです」。

そこで飛び込みで研修を志願したのが、「畜ガールズ」会長を務める谷先生の診療所。

休日ごとに足を運び、1年半かけて牛の診療を勉強。NOSAIへの中途採用が決まり、獣医師の道を歩み始めました。

重労働な仕事は、ほとんどありません。お産のときは滑車を使えば4人分ほどの力で胎児を引き出せますし、女性は要領が良いので(笑)

コミュケーション能力の高さも女性獣医師が得する点なんだとか。

「大事な情報を握っているのは畜主です。何気ない会話の中からそれをどう引き出せるかによって、治療方針が変わることもあるんです

 

ママは一家の大黒柱。牛がハッピーに育つことがやりがい

牛をみる中山先生

高校生の息子とご主人を持つ中山先生。

家族の協力なくして、この仕事は続けられなかった」と感謝の気持ちを明かしてくれました。

実はご主人は専業主夫。「獣医師になるために故郷の宮崎へ戻ると決めたこともあって。ですから私が大黒柱です」と明るく笑います。

「私は後先を考えずにやっちゃうタイプ。客観的な意見をくれる夫の存在はありがたいです。男性は凝り性な人が多いので、家事もやるなら徹底。仕事を辞めるとまではいかなくても、どんどん育休を取ってもらいたいですね」

そしてもうひとつ、中山先生を支えてきたのは、農家から日々受け取る「ありがとう」の言葉

「難産の末に産まれた牛が母子ともに無事であれば、夜中に呼び出されても苦労が吹き飛びます。牛がハッピーに育ってくれれば、畜主さんも獣医の私たちもハッピー。そんな関係を目指しています」

 

▶畜ガールズのその他の記事はこちらから

 

産業動物に興味のある女性の会(通称:畜ガールズ)

https://chiku-girls.jimdo.com/

  • 営業時間:ー
  • TEL:ー
  • 定休日:ー
  • アクセス:宮崎県宮崎市学園木花台西1-1

2016年1月発足。産業動物に関わる女性の地位向上や、畜産業界の発展に寄与することを目的として講演や調査、意見交換会などを実施している。
[ 事務局 ]
宮崎県宮崎市学園木花台西1-1 宮崎大学農学部産業動物臨床繁殖学研究室内

この記事を書いた人三角由美子

熊本在住のフリーライター。生活情報紙の編集者を経て、独立。「“コトバ”を通じて読者の気づきや行動のきっかけ作り」をモットーに雑誌やウェブ記事の執筆、出版サポートなどに携わる。自著に「熊本カフェ散歩」、「熊本の海カフェ山カフェ」。趣味は海外逃避行、博物館&美術館巡り、社会貢献。

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