牛と生き 牛だけを描く 木版画アーティスト。【後編】
No.292
はたらく
「甘みのある脂が、口のなかでとろける」
「赤身の味と香りに深みがある」
福永畜産のブランド牛「さつま福永牛」は、肉好きの間でもこんな風に評されるおいしいお肉です。2013年に全国肉用牛枝肉共励会で最高賞を受賞し、“日本一”の称号を獲得しました。
このお肉のおいしさは、どのようにして育まれているのでしょうか?
おいしさの秘密に迫るべく、鹿児島県薩摩郡さつま町の牧場で、生産部長の内村さんにお話をお聞きしました。
牛舎があるのは、のどかな田園風景の広がるさつま町。
牛舎は竹林の隣にあり、涼しい風が吹いていました。
福永畜産で大切にしていることはとてもシンプル。
「牛にリラックスしてもらい、よく食べよく寝て、健康でいてもらうことです。そのためにしっかり一頭一頭牛の様子を見るようにしています」と内村さん。
「牛にたくさん食べてもらえるように餌を工夫しています。うちでは、大豆やトウモロコシなどを窯に入れて時間をかけて炊き上げた“炊き餌”も与えています。昔ながらのやり方のいい部分を取り入れながらやっているんです」と内村さん。
これを牛に食べさせることで、赤身の味に深みが出たり、脂に甘みが出たりするそう。
また、餌をあげるタイミングも非常に大切。一頭一頭を見守りながら調整しています。
特に、体調を崩しやすい子牛の餌やりには注意しているそう。
例えば、子牛に一度にたくさん餌をあげると一気に食べて下痢をしてしまいます。そのため、餌の量を100g単位でシビアにコントロールしています。
また、一部屋に一頭しかいないと、余裕があるせいかあまり餌を食べなくなるのだとか。そのため、牛の月齢や大きさを合わせながら、一部屋に2頭入れて競り食いさせるようにするそうです。
「肥育中期・後期の牛舎ではジャズ音楽を流しています。この時期の牛は、肉質に影響が出やすくゆっくり寝てもらいたいので。前はクラシックも流していたんですけど、不思議と牛はクラシックよりジャズの方がリラックスしている印象です」
音楽によって牛の様子が変わるのは不思議です。もしかしたら牛にも音楽の好みがあるのかもしれません。
「あとは、鹿児島の夏は暑いので、扇風機やミストシャワーで熱を取るようにしています」
このおかげで、外と比べて牛舎の中は涼しく感じます。
また、このミストシャワーには、土が乾きやすく堆肥が発酵する成分が含まれています。
たしかに牛の寝床はさらっと乾いており居心地がよさそうでした。さらに、堆肥を発酵させる成分のおかげで、牛舎の匂いもほとんど気になりません。
ジャズが流れ、涼しく快適な牛舎で大切に育てられたさつま福永牛。のんびりおだやかな牛たちの様子が印象的でした。
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