どっこいしょニッポン・オリジナルLINEスタンプをリリースしました!
No.335
はたらく
酪農といえば、道北や道東エリアというイメージがある北海道。けれどほぼ中央にある富良野市でも、30戸弱と数は少ないながら、平均飼養頭数170頭以上の酪農家による堅調・発展的な経営が続けられています。
中でも有限会社藤井牧場は、日本の酪農経営でも先端的な取り組みを実践して注目を集める存在。「人も牛もどんどん育てる牧場」を経営スローガンに掲げ、多くの若者が生き生きと働く環境づくりを進めています。
飼養総数約900頭。高い技術力に加え、牛の個体管理情報を数値化しての徹底したデータ管理などによって規模を拡大し、生産効率を高めてきた藤井牧場。「高品質のものを生産して高い利益を上げる」という考えから牧場のブランド化を進め、平成27年には、JA組織から原乳流通企業である株式会社MMJへと生乳の出荷先を変更しています。
一方で、「牛をつくるのは人」という考えから、「成長支援制度」を導入。企業的なシステムでスタッフを育てています。
成長支援制度で大きな役割を果たしているのが、「成長支援シート」という1枚の紙。これは、牧場がスタッフ一人ひとりに対して何を求めているのかがひと目でわかるものです。
例えば、カテゴリー「重要業務」の項目の一つ、「繁殖業務」を見てみましょう。
「繁殖を管理する」という業務定義で、評価の着眼点は「業務遂行、妊娠率」。5段階の評価は「その業務をやっていない→サブ担当ができる→繁殖検診・受精卵移植業務を担当することができる→妊娠率22%をキープできる→その業務を優れたやり方で実施しており、他の社員にも教えている」となっています。
つまり、スタッフが業務に少しでも携わるようになれば評価され、他のスタッフに指導できるレベルに到達すると、最も高い評価を得ることができるのです。
藤井牧場では成長シートによってスタッフの成長を評価し、昇級・昇格・賞与に連動させています。評価については3カ月ごとに上司から本人にフィードバックがあり、スタッフはそれに基づいて、自分で成長目標を作成することができます。
成長支援制度の目指す到達点には「牧場の分場化」という構想があると、代表の藤井雄一郎さんは語ります。
「600頭規模の牧場を複数つくり、牧場同士で技術力を競うような、そんな切磋琢磨できる組織づくりを目指しています。だからスタッフには、将来は牧場長になれる人材に育ってほしい」
藤井牧場がある富良野市は、美しい田園風景が広がり、観光地としても有名なまち。けれど山間には遊休農地が増えつつあります。そういった農地を活用して「富良野で酪農という産業を盛んにしていきたい」という思いが、藤井さんにはあるのです。
藤井牧場では、スタッフには「プレイヤー」「プレイングマネージャー」「マネージャー」という職層があります。階層のアップには、各段階において成長シートで80点の獲得が必要です。
「プレイヤーには、牧場の全ての仕事を7〜8年で覚えてもらいたいと思っています。プレイングマネージャーは、一緒に働きながらプレイヤーを育てる人。どんな人が来ても育てられるようになったら、マネージャーとして、経営者と一緒に管理職層として働いてもらいたい」
牧場の経営を共に考え、分場牧場を運営できる人間。成長支援制度の目的は、そのようなスタッフの育成にあるのです。
「高品質でおいしい牛乳を生産するためには、何より牛の質を上げることが大事。その牛をつくり上げるためには、人の力が必要です。酪農業界でしっかりと評価される牛を育て、また社会に出てもなんら恥じることのない人間をつくり上げる努力を、たゆまず続ける牧場でありたいと考えています」。
牧場の経営理念についてそう説明する藤井さん。酪農の現場で働きながら、将来的には牧場長。そんな夢を叶えることができる藤井牧場には、大勢の若いスタッフの明るい笑顔が溢れています。