那須拓陽高校が取り組む「A2ミルク」プロジェクト。高校生だからこそできる挑戦を。 | どっこいしょニッポン

那須拓陽高校が取り組む「A2ミルク」プロジェクト。高校生だからこそできる挑戦を。

このページを印刷する

10月、栃木県立那須拓陽高校は、授業の一環として学生らが取り組んだ「A2ミルク」の販売を行った。「A2ミルク」とは、牛乳に含まれるタンパク質「β(ベータ)カゼイン」(遺伝子は「A1」と「A2」に分かれる)の中で、「A2」遺伝子のみを保有する乳牛から搾った牛乳。

飲んだ後にお腹がグルグルするなど消化不良になるのは、「A1」遺伝子が関係しているとも言われているため、「A2ミルク」はお腹にやさしい牛乳というわけだ。

本州では初となる「A2ミルク」の商品化を実現

「A2ミルク」を最初に打ち出したのは、2000年にニュージーランドで設立された「A2ミルクカンパニー」。消化の他にもさまざまな効果が謳われており、それらについての正式なエビデンスはないものの、同社の商品はニュージーランド・オーストラリアのみならず、アメリカ、そして中国圏で大きな市場を有している。

自国生産商品への不信が高まる中国では、子どものためのより安全な製品として「A2ミルク」の粉ミルクが求められているそうだ。

しかし、日本で商品化を実現しているのは、今のところ北海道・中標津の「なかしべつ牛乳プレミアム NA2 MILK」のみ。

そこで、同校の関澤拓実先生(農業経営学科/牛部顧問)は、「学校の教育の一環として、牛乳の選択肢の一つとして取り組むのであれば、面白いのではないか。また、自分たちが得たデータを地元にも還元し、今後の酪農の発展につなげてもらえるのではないかと考えた」という。

コロナ禍、生徒に提供できる新しい教材として考案

今年は新型コロナの影響で、高校は3月から強制休校となった。本来であれば、3月〜4月は、農高生たちにとって、牛の品評会などさまざまなイベントがある時期だが、それらはすべて中止。

生徒のいない3ヶ月間、校内の動物たちの世話を教員総出で行いながら、“何か新しい教材として生徒たちに提供できるものはないか”と考えた末に、出たアイデアだった。

登校再開が予定される6月からすぐに始められるよう、4月にまず同校で保有する乳牛25頭すべての血液をアメリカの検査会社へ空輸し、遺伝子解析を行った。

結果が戻ってきたのは2ヶ月後。25頭のうち、9頭が該当していた。

学校再開と共にプロジェクト本格スタート

6月に学校が再開され、プロジェクトは本格的にスタート。授業や部活動を通して農業経営科と牛部のメンバーが日々の飼養管理を行い、食品化学科とロゴやパッケージなどを制作、商品化に向けて動いた。

これまでも牛乳の自家消費は行なっていたが、今年に入って販売許可も下りたため、分娩スケジュールからまとまった乳量が取れるタイミングを見計らい、10月の販売を決めた。

道の駅2店舗で300本を完売

初回は10月22日より那須塩原市内の道の駅2店舗で販売(200mlパック130円)。GoToキャンペーンで観光客が増えたことも後押しし、数日で300本を完売した。

はじめは店舗から「30本くらいでお願いします」と言われていたが、発売開始1時間ほどで「追加で100本持ってきてほしい」と連絡が入るほどの反響に、皆が驚いたという。

話題性にプラスして、牛乳の味としての差はないが、通常だと商品化される際に他の牧場の牛乳と混乳されるが、「A2ミルク」の場合は同校産の牛乳のみで製造されることで、牧場の味がダイレクトに出る。

そのこともあって、「濃厚な味で美味しい」とお客さんからも好評価。今後も意識的に交配を行い、A2ミルクの生産を続けていく予定だ。

今後については「県の機関とともに分析を続け、細かい数字を追いながら臨床的に効果があるのかを見極め、これらのデータを地元に還元したい。トクホの飲料など機能性があるものに人気が集まる今、牛乳の選択肢を増やす提案ができれば」と関澤先生。

このプロジェクトに参加している大久保冴華さん(農業経営科/牛部所属 2年)にも話を聞いた。

この取り組みを全国の方に知って欲しい

…先生からこの「A2ミルク」のプロジェクトの話を聞いた時はどう思った?

大久保 本州で初めて「A2ミルク」を那須拓陽高校から出すと聞いて。最初はA2ミルクのことを知らなかったんです。でもいろいろ調べたり、食品研究所で那須拓陽のA2ミルクの成分を見せてもらう中で、自分の高校の牛でこのようなプロジェクトができるということに感動を覚えました。

夏休みにインターンシップに行かせていただいた県内の農家さんもA2ミルクに取り組んでおられるのですが、「なかなかうまくいかなくて、お金もかかるから大変。那須拓陽高校が取り組んでくれるのは嬉しい」と言ってくださいました。

…今回のプロジェクトは、農業経営科と牛部、食品化学科が連携して商品化に至ったとのこと。5ヶ月かけて学科を超えてプロジェクトを成功させた喜びもあったのでは?

大久保 私たちが一生懸命育てた牛から搾った牛乳を食品化学科の方々が美味しく加工して皆さんに届けてくれて、そのおかげで牛部や農業経営科の魅力も校外に伝わっていくことがすごく嬉しかったです。商品ができた時はみんなで喜びました。

…いよいよ10月に一般販売が実現。商品が完成して、いかがでしたか?

大久保 学外販売と同時に校内販売もあって、私も買いました。濃いんだけどあっさりしていて美味しくて、クラスの友だちは「私はいつも牛乳飲むとお腹が緩くなるけど、これは違う気がする」と言ってくれました!

お昼休みに50本売り出したんですが、行列ができて、私のところでちょうど最後の1本になって。後ろに並んでいた子たちが「明日絶対買いに来よう」って言ってくれているのを聞いて、すごく嬉しかったですね。

今後は、私たちが行っている活動を栃木県内だけでなく、全国の方に知ってもらうことが目標です。

中学2年で初めて牛に触れ、すっかり魅せられた

…大久保さんが那須拓陽高校に入ったきっかけは何だったの?

大久保 幼なじみに和牛農家をやっているお家があって、その子のお父さんが声をかけてくださって、冬休み・春休み・夏休みに手伝いに行ったら、和牛の魅力にすっかり惹かれてしまったんです。

それまではやりたいこともないし、「高校に行きたくない」とか言っていたんですが(笑)。それからいろいろ調べて、農業も勉強できて、牛のお世話もできる那須拓陽高校を目指しました。

…牛部に入ったきっかけは?

大久保 中学生までは吹奏楽部と陸上部に入っていたので、どちらも見に行ったんですが、部活紹介で牛部を知って、農場に見学に行ったら、先輩たちが牛洗いをされていて。これほど牛を間近に見たのは初めてで、「すごい可愛い! この部活に入れば毎日この子たちに会えるんだ」と思い、そのまま入部しました(笑)

これほど動物の道に進むなんて、中学2年までは自分でも思っていなかったし、お母さんも驚いています(笑)

…那須拓陽高校に入って、何か変わったことはある?

大久保 自分たちで牛を一生懸命育てたり、私は野菜が好きなんですが、スーパーマーケットで並んでいるのを見ただけではわからないけど、野菜も出来上がるまでにいろんな過程があるんだということを知って、野菜もお肉も食べる時の気持ちやありがたみが大きく変わりました。

▲大久保さんのスマホのカメラロールの中から、お気に入りの1枚を。

将来は恩師のような畜産の先生になりたい

…将来はどう考えているの?

大久保 私は卒業したら北海道の酪農学園大学に進学して、教職課程を取り、いろんな資格も取って、最終的には畜産の先生として那須拓陽高校で働きたいなと思っています。

2年生から畜産の授業が始まって、関澤先生の授業が本当に楽しいんです。授業がくるたびに“今日は何をするんだろう”とワクワクして。

先週の授業なんて、「鶏の体のつくり」を勉強したんですが、関澤先生が家で飼っている烏骨鶏を連れて来てくれて、教室で放してみんなで勉強しました。

言葉にできないくらい楽しくて、「この先生最高だな!」と改めて思いました。“動物と言えば関澤先生”というくらい、本当に尊敬できる先生です。ちなみに烏骨鶏は卵から孵したらしいです(笑)

▲最後は、大久保さんが高校に入って大きく影響を受けたという関澤拓実先生と一緒に、牛ポーズで。