「乳牛の美人コンテスト」って何?その意義と審査ポイントを専門家に聞いてきた | どっこいしょニッポン

「乳牛の美人コンテスト」って何?その意義と審査ポイントを専門家に聞いてきた

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こんにちは。ライターの富江弘幸です。

皆さん、東京オリンピックのチケット抽選結果はいかがでしたか? 厳正なる抽選を行っていただいた結果、私は全敗。

オリンピックを見るチャンスが完全になくなったというわけではありませんが、もしかしたら見ることができないかもしれない。そうなったら2020年は何を楽しみに過ごせばいいのか、と思っていたのですが……。

なんと、2020年に九州でビッグイベントが開催されるという噂を耳にしました。

その名も、「全日本ホルスタイン共進会」。

主催者の日本ホルスタイン登録協会に聞いてみた

全日本ホルスタイン共進会とは、乳牛(ホルスタイン種)の美人コンテストとも称されるイベントだそうです。

でも、乳牛って見た目はみんな同じじゃないですか?

美人(美牛?)と言われても、何をもって美しいと言っているのか、そもそも何のためにやっているのか……その疑問を解消すべく、全日本ホルスタイン共進会の関係者にお話を伺うことに。

やってきたのは都内にある「日本ホルスタイン登録協会」。ホルスタインの血統登録や改良に関する事業、刊行物の発行を行っている団体で、全日本ホルスタイン共進会の主催もしているそうです。

今回は、日本ホルスタイン登録協会の専務理事である栗田純さんと、全共対策室長でコンテストの審査委員もされている池田泰男さんに、お話を聞くことができました。

2020年に開催される5年に一度の「全日本ホルスタイン共進会」

▲中央が栗田純さん、右が池田泰男さん

富江:今日はお忙しいところありがとうございます。2020年に「乳牛の美人コンテスト」とも言われる全日本ホルスタイン共進会というイベントが開催されると聞いたのですが……。

栗田:はい、5年に一度開催されるイベントで、2020年10月31日(土)から11月2日(月)まで、第15回全日本ホルスタイン共進会が宮崎県都城市で開催されます。

過去の大会は単県開催でしたが、今後はブロック開催方式を採用して、今回は九州・沖縄8県による共同開催になります。九州・沖縄の酪農家や関係者が連係を深めて、九州酪農の素晴らしさや改良への意欲を全国に向かって大きくPRする狙いがあります。全国から乳牛が270頭ほど集まってくる予定です。

富江:2020年に開催される共進会は全国大会で、高校野球で言えば甲子園のようなものですよね。ということは、各都道府県で予選があって、それぞれの代表が集まってくるんですか?

栗田:そうですね。ただ、47都道府県全てではありません。頭数も県によって異なります。北海道は酪農が盛んなので、出場する頭数もも多いですね。審査のカテゴリは全部で14部あるんですが、その全てで3位くらいまでを北海道の牛が占めたこともあるんですよ。

▲全日本ホルスタイン共進会の開会式の様子。(写真提供:日本ホルスタイン登録協会)

▲審査される乳牛たち(写真提供:日本ホルスタイン登録協会)

富江:北海道はやっぱり乳牛王国なんですね。でも、乳牛って見た目はほぼ一緒じゃないですか。模様が特徴的な牛は目立つと思いますけど。受賞する乳牛は、どんなところが優れているんですか?

栗田:酪農家にとって乳牛は、長期間にわたって乳を生産してくれるのが一番ありがたいわけです。そのためには、健康で、体型、四肢、消化能力などがしっかりしていないといけない。

富江:なるほど(模様の美しさを競うわけではないのか……)。乳牛としていかに優れているかを競うんですね。

栗田:共進会は、乳牛が健康なまま長く乳を生産するために必要な体型の改良度合いを、比較展示するための大会なんですよ。最高位になった乳牛を参考に、より良い飼養管理や改良につなげていくのが目的です。

富江:じゃあ、いろいろな牛の体型を見比べて、あれはいい、これはダメとか……。

栗田:もちろんできるだけ客観的に審査できるように、「審査標準」というものがあるんです。それを100点満点として評価します。ただ、共進会の会場では厳密には採点せずに、順位を付けるだけですね。

乳牛コンテストの審査員はここを見ている!

富江:審査では具体的にどんなところを見ているんですか? その審査標準について教えてください。

栗田:雌牛の審査標準としては4つ項目がありまして、配点が最も高いのが「乳器」で100点中40点。「体貌と骨格」が25点、「肢蹄」が20点、「乳用強健性」が15点という配点です。

富江:乳牛はやはり乳器が重要……! 乳用強健性というのは?

栗田:乳用強健性は、無駄な肉が付いていないかどうか、肉付きを見ます。食べたものが無駄な肉にならず、できるだけ乳に還元できるのがよいということで。

富江:それが外見で判断できるんですね。

栗田:先ほど審査のカテゴリは全部で14部と言いましたが、子牛と親牛を比較しても意味がないので分けているんです。経産牛と未経産牛では外見がまったく違いますからね。あくまでも基準という意味で、こんな像もあります。

富江:立派な乳器ですね。これぞ乳牛、という。

池田:実はこの模型は何年も前のものなので、その当時の100点といまの100点は少し違ってはいるんですけど、大まかにはこういう見た目を目標としているわけです。前回の共進会のチャンピオン牛の実際の写真をお見せしましょう。

▲一般社団法人 日本ホルスタイン登録協会(編)「第14回 全日本ホルスタイン共進会」記念冊子(2015)より。

富江:おお……! すごい! 模型とは比べ物にならない迫力! かなり貫禄がありますけど、このチャンピオン牛はどんなところがすごいんでしょう?

池田:例えば、前乳房の付着がいいんです。

富江:前乳房? 付着?

池田:乳房の前の部分がどれくらいお腹にくっついているかですね。乳房は年齢とともに下がってくるんですが、搾乳機を付けるにあたって、乳房は上にあったほうが作業しやすいんですよ。ここですね。

富江:なるほど。 確かに!

池田:そういう意味では、後乳房の高さも重要になります。できるだけ乳房が上のほうからスタートしていると地面までの距離が稼げるんです。それを牛の後ろから見る。

▲一般社団法人 日本ホルスタイン登録協会(編)「第14回 全日本ホルスタイン共進会」記念冊子(2015)より。

富江:たしかに、他と比べるとこの乳牛の乳房のスタート地点はかなり高いみたいですね。

池田:そして、乳房の幅も確認します。大きさは乳量にも比例してくるので。

富江:そうなんですね! こういう視点で牛を見たことはなかったです。

池田:あとは、肋骨が外に張り出しているかどうかも見ます。後ろから見て、お腹が左右に張り出しているような感じです。横から見栄えがよくても、後ろから見ると幅がなくてペタッとしている牛もいるんです。

富江:外に張り出していると何がいいんですか?

池田:牛には大きな胃が4つありますから。食べたものをしっかり消化できるということですね。

富江:なるほど…….。先ほどからなるほどが止まりませんが、お話を聞いていて、だんだん乳牛を見るポイントがわかってきました。もしかしたら、これは東京オリンピックよりもおもしろいかも……。

酪農家の苦労とは

富江:でも、これだけ立派な乳牛を育てるとなると、酪農家さんも大変でしょうね。生き物を育てるのは、苦労が多いはず。

栗田:まず、血統が大事にはなってきます。親の雌牛に改良したい部分があれば、そこを直せるような特徴のある雄牛を交配します。特定の雄牛にばかり頼って近親交配にならないよう気を配ることも大事です。

富江:やはり遺伝も大事なんですね。

栗田:遺伝は体の大きさや乳脂肪率などに影響を与えます。ただ、乳房の形状や脚の強さといったところは、遺伝的な影響は非常に少ないですね。

富江:えっ、そうなんですか。むしろ乳房の形状や脚の強さのほうが、遺伝的に影響があるように思っていました。

栗田:大切なのは、生まれてきた仔牛をしっかり育成すること。良質な粗飼料(そしりょう=牧草や乾草などのエサ)を食べさせて、パドックで歩かせたり広い牧場で放牧したりと、しっかり運動をさせると、発育がよくなるんです。良い牛を育てるには、そういった管理が大切になってきます。

富江:遺伝と育成が大切だと。

栗田:はい。共進会に参加する酪農家の方々は、改良に対しての関心・意識が強いですね。

全日本ホルスタイン共進会はこうやって楽しむ

(写真提供:日本ホルスタイン登録協会)

富江:いろいろとお話をうかがって、乳牛に対する見方が変わりました! 共進会の審査がとてもおもしろく見られるような気がします。

栗田:共進会のメインの日はかなり混み合いますが、審査場は自由に見学できます。

富江:審査では競馬のパドックみたいに、牛が輪になって歩いているところが見られるんですね。

栗田:そうですね。全国から優れた乳牛が出てくるので、審査を初めて見る方であれば「きれいだな」という感想を持っていただけると思います。部によって30分から1時間くらい、乳牛の歩く姿を審査員が見て審査します。そこで一頭一頭の体のつくりをしっかり確認して、順位を付けていくんです。

富江:最高位賞はどんな基準で決めるんですか? 月齢・年齢が違っていると比べにくいと思うんですが。

栗田:その年齢に合った発育になっているかどうか、です。ただ、年齢も違ったり、未経産牛も経産牛もいたりしますが、やはり乳牛としては経産牛のほうがより上のほうに評価されることが多いですね。

富江:確かに、乳牛としては経産牛であってこそという感じがします。

栗田:例えば、2歳だと初産で若々しさがありますが、6歳だと4産くらいしています。4産していても、これだけしっかりした体を持っていて充実している。そんな比較をすると、6歳のほうが優れている、という評価になるんです。

富江:なるほど。自分で乳牛を見て、順位付けをしてみてもおもしろいかもしれませんね。今日お話をうかがって、2020年が楽しみになってきました。ありがとうございました!

 

(企画・編集:株式会社LIG / 撮影:岡田佳那子)

全日本ホルスタイン共進会

https://www.15th-holstein.jp/

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この記事を書いた人富江 弘幸

地域とビールをテーマに執筆しているライター。地域がどのようにコミュニティや経済を作っているのか、どんな方向を目指して進んでいくのかが気になっています。そこにビールがあればなお良し。 twitter:@hiroyukitomie

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