第5回農高アカデミーレポート! 「養豚業界の現状とこれからの発信」
No.344
つながる
豚肉ではめずらしい商標登録を行っている、ピッグファーム室岡の「米澤豚一番育ち®」。
山形県米澤の看板を背負った豚肉は、現在、日本国内はもちろんのこと、香港やタイ・マカオなどの飲食店で提供され、現地のお客様に愛されています。
今回は、ピッグファーム室岡の室岡社長に、山形産豚肉のブランド化戦略や海外進出についてのお話をお聞きしました。
「ブランド化を意識し始めたのは、昭和から平成に変わる頃でしたから、かれこれ30年になります。『日本一のカツ丼を作ろう』というテレビ番組があり、当社の米澤豚一番育ち®が数あるブランド豚の中から、選ばれ実際に使用されたのです」
ブランド化戦略に取り組んだ経緯について、室岡社長はこう語ります。
「この時、安心・安全で、かつ高品質なものであれば、値段が少し高くてもお客様は選んでくれることを確信しました」
そんなピッグファーム室岡が海外進出を果たしたのは2004年11月のこと。
香港で開かれた山形県食品商談会に、県食肉公社と一緒に米澤豚一番育ち®を出品。その結果、老舗日本料理「なだ万」の香港店との間で取引契約が成立したのです。
「なだ万」は、1981年(昭和56年)から海外進出をしていますが、県食品商談会で具体的な成果となる契約は初めてのこと。九州産の「黒豚」に代わり、米澤豚一番育ち®が豚肉の主力食材として納入されることになりました。
「なだ万」との契約の決め手となったのは、「癖や臭みがなく豚本来の味がする」と評される味覚の高さはもちろん、一般の豚肉と比較してビタミンEの含有量が多いことでした。
これが「健康志向の強い香港の消費者に広く受け入れられる」と評価され、契約に至ったそうです。
以後、香港に2店舗ある「なだ万」は、米澤豚一番育ち®を使った、とんかつを提供しており、好評を得ています。
さらに最近では、日本食が定着し、とんかつ店の出店も相次いでいるタイの首都バンコクでも、有名店「湯島とんかつ かつ真」で米澤豚一番育ち®が使用され、看板メニューになっています。
「とんかつは、なかなか差別性を出しにくい商品ではありますが、いい味を求めるシェフとの出会いによって、ますます味に磨きがかかっています。シェフたちに選ばれる高い味覚と品質の確かさを持続させていくことが、農場で働くスタッフにとっても自信となり、働き甲斐につながると考えています。」と、室岡社長は語ります。
TPPをはじめ、日欧EPAなど、豚肉をめぐる国際競争が激しさを増す昨今。
豚肉の安全性はもちろん、高品質であることが競争力をつける絶対条件だと、室岡社長はいいます。
「商品に対する絶対的な自信と誇り、そしてきちんと利益がとれる仕組みづくりができれば、生き残っていけると確信しています。」
また、山形産をブランド化し海外に積極的に輸出することで、山形県全体の経済発展にも貢献したいとのこと。
「今後、ますます競争が激化していくことが予想されますが、臆せず積極的に展開していきたいと考えています。」
そう語る室岡社長の目は、自信に満ちていました。
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