第8回農高アカデミーレポート! 「“イベント作り”の裏側を覗いてみよう」
No.354
つながる
“乳クリエイター”を名乗る、ファームつばさの牧場主・清水大翼(しみず・だいすけ)さん。福島県鮫川村で牧場を営む若き酪農家は、その名の通り大きな翼を広げて、酪農業の大いなるポテンシャルに賭けています。
こちらが大翼さんの名刺。凝ったデザインに〝乳クリエイター〟という肩書が目を引きますが、そもそも“乳クリエイター”とは?
「資格や認証があるわけではなく、自分で勝手に名乗っています。大学を卒業して自分のやりたい酪農を考えたとき、放射能の問題があって最初から放牧を手がけるわけにはいきませんでした。そこで、酪農家としての基盤固めのつもりで、小学校に牛を連れていって子どもたちに食育や命の大切さを教える授業のお手伝いをしました。そういう対外的な活動をするには肩書があったほうがいいだろうと、先に〝乳クリエイター〟を名乗っていた先輩の許可を得て自分もこの肩書で名刺をつくりました。」
大翼さんには、「牛乳に関したことであればどんなことでもやってやろう」という野心があります。
「最終的な目標は、牛や酪農のことに興味を持ってもらうこと」
乳クリエイターという肩書は、いわばその“決意表明”なのです。
大翼さんは、酪農業と両立して引きこもりやニートの若者や子どもたちへの支援活動も行っています。これも、乳クリエイターとしてのメイン活動のひとつです。
というのも、もともと、ファームつばさは、大翼さんのお父さんが主催していたNPO法人「明日飛子ども自立の里」の酪農部門として産声をあげました。立ち上げ時は、「明日飛子ども自立の里」の子どもたちにも開拓を助けてもらったとのこと。
「現在の牧舎は30年ほど前からあったもので、前の所有者が酪農をやめてから荒れ放題になっていました。それを僕が借り受けて使うにあたり、“明日飛子ども自立の里”に相談にきた若者や村内在住の引きこもりの若者にも呼びかけて、手入れを手伝ってもらいました。」
去年までは月に1回、2泊3日で「明日飛子ども自立の里」の子どもたちが泊まり込みでやってきて、一緒に牛の世話をしていたそうです。そのなかには、現在でも牧場の仕事を続けている子もいるとのこと。
牧場が独立した現在でも、大翼さんは引き続き若者支援の活動に注力しています。「明日飛子ども自立の里」はいわき市に「いわき若者サポートステーション」という拠点を持っているため、今でもいわきに出かけていって、相談に来ている若者たちと顔を合わせ、一緒に活動をしているそうです。
「牧場が若者たちのジョブトレーニングで外に出る前の前段階の受け入れ先となり、かつ、動物とのふれあいを通して自己表現ができる場になれば」と、大翼さんは言います。
〝乳クリエイター〟としての大翼さんの活動には、酪農のあらたな可能性が垣間見えました。今後の活動に要注目です。