阪神百貨店「食祭テラス」のプレゼンターにどっこいしょニッポンが参戦!「牧場北海道」11/…
No.360
つながる
北海道清水町から「あすなろ牛乳」や「農園のムース」、「あすなろヨーグルト」といったこだわりの乳製品を届けている「有限会社あすなろファーミング」。原料となる生乳を搾っているのは代表の村上勇治さんから牧場管理のバトンを受け取った次男の博昭さんです。
博昭さんが牧場を継ごうと考え始めたのは中学生のころ。当時は牛と接するのが楽しいと思う程度でしたが、努力した分だけ生乳の質や味の向上という結果が伴う酪農の仕事にいつしか本気で心が引かれていきました。
「僕は学生時代に微生物や土壌分析について学んでいたので、父がこだわりを持って取り組んできた土づくりをさらに進化させてみたいと思いました」
いい生乳はいい牧草から生まれ、いい牧草はいい土から生まれるというのが博昭さんの持論。おいしさの根幹ともいえる土づくりを最重要の課題に、今は試行錯誤を重ねているところです。
「ヨーロッパの牛は日本の牛と比べて健康で病気が少ないといわれています。その要因の一つは土の違い。日本の土は微生物の数が多いのがメリットですが、ミネラルがかなり少ないんです。なので、僕はミネラルが豊富な海のモノを土に吸収させています。え? 何を入れてるかって? 企業ヒミツです(笑)」
博昭さんが目標としているのはヨーロッパの土。その性質にいかに近づけていけるかが勝負なのだと熱い口調で語りました。
博昭さんが牧場を手伝い始めた当時は、生産現場の仕事を覚えながら物産展でヨーグルトやムースなどを販売することもあったそう。
直に消費者と接した経験は、もっとおいしいものを届けるためにはもっと質の高い生乳を搾らなければならないという意識を高めてくれたといいます。
「ただ、今は牧場から手が離せないので、消費者の方とふれ合うために『来てもらう』取り組みにも力を入れています。ここ最近では修学旅行の生徒にファームステイとして牧場に泊まってもらい、農業の大切さから辛いことまでを包み隠さず伝えています」
博昭さんはファームステイの生徒たちに、流行の食品や好みの味を必ず聞いて回っています。自分が搾った生乳から加工品が生まれるからには、生産者自身も「今のニーズ」を汲み取ることが大切だと考えているのです。
一通り取材を終えたところで最後の質問。お父さんの尊敬するところって? 博昭さんは「う~ん」としばらく考え込んだ後にこう答えました。
「思いを行動に移す力はスゴいですね。昔は生乳の生産だけだったけれど、加工から販売まで手がける六次化の牧場へと180度舵を切ったのは驚きました。ただ、オーガニックに転向したことで一時期は乳量が大きく減ってしまったから、最初のうちは戸惑いましたよ…先走りすぎだって(笑)」
家族だからこそ本音を伝えられないケースはよくあること。けれど、多少は照れながらも父を讃える言葉を口にした博昭さん。すてきな親子関係に心がほっこりと温まりました。