どっこいしょニッポン×ch FILES 大動物の臨床獣医師 瀧口朝陽先生 | どっこいしょニッポン

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大動物の臨床獣医師 瀧口朝陽先生

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高校図書館から発信するch FILESと畜産応援Webサイト「どっこいしょニッポン」のコラボ企画。

今月は、茨城県の産業動物を扱う“牛の獣医さん”瀧口朝陽先生を訪ねました。このままドラマのモデルになりそうなほど、美人で明るい先生! 牧場への往診にも同行させていただきました!

 

●瀧口朝陽(Asahi Takiguchi)
‘89年、千葉県出身。3歳から6歳までアメリカで育つ。日本獣医生命科学大学獣医学部獣医学科を卒業後、茨城県のひので酪農業協同組合に臨床獣医師として勤務。

 

■獣医師のお仕事って?

獣医と言っても仕事は本当にさまざま。犬猫などペットを扱う獣医からエキゾチックと呼ばれるカエルやヘビなどを扱う獣医、朝陽先生のように産業動物を扱っている農家さんの往診に回ったり、水族館や動物園で働く獣医、家畜保健所に勤めて検疫をしたりウイルスが蔓延した際に検査をしたり予防のために動く獣医、化粧品メーカーに勤めて動物に協力してもらうテストに立ち会う獣医もいます。

瀧口朝陽先生

瀧口朝陽先生▲往診先へ到着するとすぐに準備を整えて、するりと牛舎の中へ。

Q. お仕事内容を教えてください!

農家さんから「牛が立たなくなった」とか「エサを食べなくなった」など電話で依頼が入ると、車に薬などを積んで往診に回ります。
乳牛は、品種改良を重ねて牛乳が多く出るようにしたりしているので、牛の体にかなり負担がかかっていて、病気とも隣り合わせなんです。乳牛であれば赤ちゃんを産まないと牛乳は出ないので、乳牛が100頭いる牧場だったら3日に1回は赤ちゃんが産まれているくらい、日常的に分娩が行われています。だから出産のための人工授精も、仕事の一環として行っています。

…夜中でも呼び出されることがあるんですか?

そうですね。夜中に農家さんから「難産でどうにもならないから助けて!」って電話がかかってくることもあります。難産の時は、分娩を介助したり帝王切開をしたり。そんな時はスッピンで駆けつけます(笑)

牛の診察をする瀧口朝陽先生

牛の検診をする瀧口朝陽先生▲一頭一頭エコーを使って、卵巣や子宮の状態を検診していきます。牧場主さんとの情報交換やコミュニケーションも欠かせません。

Q. お仕事で大変なことは?

女性であることで言うと、力仕事が多いことかな。牛を移動させるだけでもかなり力が必要だし、難産の場合は、仔牛だけでも何十キロという重さがあるので、足などが引っ掛かってしまった仔牛の胎位を、産道に手を入れて片手で整復するのは男性でも大変な仕事だと思います。
ただ、最近は女の子でも産業動物の獣医を目指している子が増えてきていて、私の大学の同期でも、女の子の方が多かったです。

Q. どんな時にやりがいを感じますか?

急患で駆けつけて、「先生が来てくれて助かったよ、ありがとう」と言われると良かったなと思います。
他にも例えば夏であれば牛も熱中症になることが多いんですが、牛舎全体を俯瞰して見て、一部の牛のところだけエサが残っているなと思えば、西日が当たっている場所の牛が状態が悪くなっているんじゃないかな、ここをこう直してみたらどうですか、と牛舎の構造から提案することもあります。それで牛の状態が改善されると、1頭ずつの治療ではなく牛群として治すことができるので、「よし!」って思いますね(笑)

人工授精の準備をする瀧口朝陽先生

牛舎の牛たち▲続いては、往診車に乗せた液体窒素ボンベの中でストロー状に凍結保管されている精液を取り出し、発情期がきている牛に人工授精を行います。

Q. 大動物の獣医さんになろうと思われたきっかけは?

獣医学部を受験した時には、私も大動物の獣医師という存在も知りませんでした。
普通の犬猫の獣医さんになろうと思って入ったんですが、大学1年の時に馬術部に入って、そこで馬がかわいいなと思ったのと、大学の牧場実習で牛に接した時に、“私はこっちの方が向いているかも”と感じたのがきっかけでした。
犬でも大きい犬の方が好きで、そこはもう、感覚なんですけど。もともと医療系に行こうということは決めていたんですが、獣医の道に決めたのは高校3年生くらいの時だったかな。

Q. 実際に仕事を始めて驚いたことはありましたか?

私は動物が好きでこの仕事に就いたので、仕事を始めた頃、産業動物を扱うことの葛藤はたくさんありました。
ペットの獣医の場合、何かあれば全力で助けて欲しいと望む飼い主さんがほとんどだと思いますが、例えば乳牛の場合は、おばあちゃん牛を何十万も治療費をかけて助けても、農家さんにとっては得にはなりません。
私たちは治すことだけが目的ではなく、その牛が今後治療費を上回るだけの利益を出せるかどうかを判断しないといけないんです。
治りそうにないとなれば、農家さんとしてはお肉にして売るという選択もあります。ただ、お肉にする条件として休薬期間が定められていて、薬を入れてしまったら、その選択肢も消えてしまうこともあるんです。

牛の分娩を行う瀧口朝陽先生

生まれたての子牛▲牛舎には、生まれて間もない赤ちゃん牛もたくさん。人懐っこい仔牛を優しく撫でる朝陽先生。この日も1頭、可愛い仔牛が生まれました!

Q. 一日のスケジュールを教えてください!

朝8時半に出勤して、30分~1時間くらい電話の受付をして、所属している獣医の中でその日の往診の担当を割り振ってから出発します。
午前中の往診をして車の中でお昼を食べて、またお昼から夜まで農家を回って行きます。1軒1軒が離れているので、場合によっては1時間半ほどかけて行っても治療は5分、という時もあります(笑)。
もともとペーパードライバーだったので、最初の頃は道もわからないから本当に大変でした。田舎の道だから目印にしていた木が切られちゃっていたり、季節によって景色が変わってしまって(笑)。1日100km以上、時間で言うと5時間ほどは車に乗っているかもしれないですね。

Q. リラックスできる時間はありますか?

ひとりでの車移動の時間が長いので、移動中に車の中で音楽をガンガンにかけています。アヴィーチーとかテイラー・スウィフトとかリアーナとか(笑)。往診に行くといろんなことをひとりで判断しないといけないので、最初はすごくプレッシャーもありましたが、今は車の中で気持ちも切り替えて次に行けるようになりました。

瀧口朝陽先生の車内

瀧口朝陽先生▲往診用の車には治療道具一式がびっしり。お薬から注射器、エコー、人工授精のための器具、液体窒素ボンベ…。車移動が長いので、食料品や汚れた時の着替えや化粧道具までなんでも揃っています! ノリノリでモデルをしてくださる朝陽先生も素敵です(笑)

Q. どんな人が向いていると思いますか?

獣医は変わっている人は多い、かも。我が強い人が多いです(笑)。自分で決めて判断をしないといけないので、リーダーシップを取れる人の方がいいかもしれないですね。
あとは、動物相手の仕事ではあるんですが、実際のところは農家さんが相手なんです。だからいくら医学的に正しいことをやっていても、農家さんが「そうじゃない」と感じればそれは間違いになってしまう。その点では農家さんとコミュニケーションを取る能力がかなり必要とされると思います。
往診にむかう瀧口朝陽先生▲そして朝陽先生は、次の往診先へ。胃の手術が必要な牛さんが待っているのだとか。

■取材を終えて

全く知らなかった大動物の獣医さんというお仕事!
日頃食べている牛乳やお肉の見方も大きく変わりました!

くるみ(高3)・あい(高2)
この日同行させていただいた弓家牧場さんでは、乳牛の卵巣や子宮の状態を確認する定期検診、人工授精、仔牛の出産、母牛の体力を戻すための栄養剤の点滴が次々と手際よく行われました。検診をしながら牧場主の弓家さんと牛の状態について話したり談笑される姿に、信頼関係を強く感じました。このまま女優さんになれそうなほどサングラスの似合う朝陽先生がカッコ良すぎて、牛にまつわる仕事のイメージが180度変わりました! 日頃食べている牛乳やお肉の見方も大きく変わりました!

CH FILES

瀧口朝陽先生