【ch FILES 連動企画】数少ない女性の担い手。牛の蹄を削る専門家・削蹄師の柿澤美希さんに、都立農産高等学校の高校生が聞く | どっこいしょニッポン

【ch FILES 連動企画】
数少ない女性の担い手。牛の蹄を削る専門家・削蹄師の柿澤美希さんに、都立農産高等学校の高校生が聞く

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※こちらの記事は、高校の図書室から発信するフリーマガジン「ch FILES」との連動企画です。

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東京都立農産高等学校、中村さんと丹下さん削蹄師の柿沢美希さん

▲右→左 削蹄師の柿澤美希さん / 丹下奈美(東京都立農産高等学校3年) / 中村優(東京都立農産高等学校2年)

高校時代、削蹄(さくてい)の風景を初めて目にした日から、削蹄師という職業に魅せられ、数少ない女性の担い手として、その道を歩き始めた21歳の柿澤美希さん。

大友削蹄研究所に所属しお仕事をされている柿澤さんと所長の大友浩次さんに、都立農産高等学校の丹下さんと中村さんがお話を伺いました。

 

削蹄師とは? そして、お仕事との出会い

削蹄師の柿沢美希さん

「名前の通り、牛の蹄(ひづめ)を削るお仕事です。馬には装蹄師(そうていし)さんというお仕事があり、牛と馬はまた別の専門になります。蹄は伸びてくると立っている時のバランスが傾いてしまい、歩けなくなってしまいます。人間で言えばO脚になってしまう感じです。牛は足の状態から他の病気につながってしまうこともあるので、大友研究所では、年に3回の削蹄を提案しています」

作業をする削蹄師の柿沢さん

削蹄のお仕事を「楽しい」とおっしゃる柿澤さん。お仕事との出会いは、農業高校に通う高校2年生の頃。それはとても衝撃的なものだったといいます。

埼玉県立熊谷農業高校に通っていた時、高校で牛を飼っていたんです。その牛の削蹄をしてくださっていたのが大友さんで、高校2年生の頃に、実際に削蹄風景を見て、もう、直感で「おもしろい!」「自分もやりたい」と思いました。それまでは農業高校に入ったきっかけも“動物が好きだから”という程度でしたし、削蹄という仕事のこともまったく知らなかったのですが、初めて見て知って、それがすごく衝撃的で。削蹄枠(機械)を使ってグラインダー(回転する研磨用の工具)で削るということにもびっくりして」

削蹄師の柿沢さん、仕事風景

人が牛の足を持ち、鎌で蹄を削る手作業の削蹄が本流だった20年ほど前に、いち早く油圧式削蹄枠を使った現代の削蹄法を取り入れた親方の下で修業された大友さんは、ご自身も機械を利用した削蹄方式を取り入れていらっしゃいます。

この日見せていただいた削蹄枠は、2年前にスペインへ自ら赴き、購入されたというスペイン産の油圧式枠。

「今でも牛の足を抱えて持ち上げて2、3人掛かりでやっていらっしゃる方々はいるんですが、熟練の匠の技が必要で、足を持ち上げるだけで3年、刃物(削蹄鎌)を持たせてもらってから3年修行、独立するまでに少なくとも6年の年月がかかります。でも僕は、もともと牧場で働いていて、削蹄師という仕事に就きたいと思った時には30歳になって家族もいたので、削蹄枠を使った方法ならできるなと思って勉強を始めました。女性にも携わってもらいやすいと思います」と、大友さんはおっしゃいます。

 

内気な高校時代から大きな変化を遂げた今

対談する高校生と削蹄師の柿沢さん

▲左奥:柿澤美希さん 左手前:大友浩次さん 右奥:丹下奈美 右中央:中村優 右手前:小林果奈(ch FILESスタッフ)

「仕事を始めて随分鍛えられましたが(笑)、高校生の頃はとても内気で、話すのもとても苦手でした。削蹄の様子に感動しても質問することもできなくて(笑)。弓道部に入っていましたが、特に体力づくりをしているわけでもありませんでした」 と、柿澤さん。

そんな柿澤さんが飛び込んだ削蹄師の世界。日本に1,000人ほどいらっしゃるという男性に対し、女性のなり手はとても珍しく、大友さんが知る限りでも、柿澤さんを含めて3名ほどしかいらっしゃらないのだとか。
男社会の現場は厳しくないのでしょうか?

「やっぱり力仕事なので、入社して1ヶ月くらい経った頃、初めてグラインダーを持たせてもらって、大友さんたちがある程度削った蹄を20頭分ほど削らせていただいた時は、疲れ果てて帰りの車の中でまったくしゃべれないほどでした。かなり筋肉痛にもなりました。でも1年経った今は慣れて全然平気で、はじめ持てなかった1.8mの柵も2枚持ったりしています(笑)。正直体力が持たなくて続けようか迷った時期もありましたが、今は牛の健康状態を足からでも良くしてあげられることが嬉しくて、少しでも勉強して経験を増やしたいなと思っています。辞めなくて本当に良かったと思います」

 

高校生へ。気になったら自分で踏み込む勇気が大切

柿沢さんと大友さん

「私が思うことは、自分が“やりたい”と思えるかどうか。そう思ってやらないと続かないということです。同じ酪農でも、牧場で働く人もいれば人工授精師や獣医などいろんな仕事があるので、少しでも畜産に興味を持ったなら自分からいろんな仕事の見学に行ってみた方がいいと思います。私は高校生の頃に削蹄を見て衝撃を受けて“やりたい”と思い、その後埼玉県農業大学校で酪農を勉強していましたが、大友さんの求人募集を見て、“やっぱり諦めきれない”と思い、電話をさせていただきました。アルバイトで削蹄をさせてもらったら、もうこの職業から離れられなくなってしまって。一目惚れという言葉に近かったと思います。最近では農業高校の子たちに削蹄を見てもらったりすることもやりがいのひとつで、女性の削蹄師がもっと増えれば嬉しいなと思っています」 と、柿澤さんはおっしゃっていました。

丹下さんと中村さん

高校卒業後は北海道の帯広畜産大学に進学が決まっている丹下さんは、初めて見る柿澤さんの削蹄作業にとても感動した様子。

「私は農業がやりたくて畜産大学への進学を予定していて、削蹄師さんという言葉は、大学のパンフレットで見て知っていました。でも今回初めて削蹄の作業を見て、淡々と仕事をされている柿澤さんの姿に感動して、自分もやりたい! という気持ちになりました。柿澤さん、憧れます。とにかくめちゃくちゃカッコよかったです」
と、目を輝かせていました。

これからの女の子たちの畜産業界での活躍に、要注目です。