引継ぐ者、引き継がれる者。酪農後継者の思いとは。 | どっこいしょニッポン

引継ぐ者、引き継がれる者。
酪農後継者の思いとは。

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木目澤牧場の初実さんと牛

今回は、酪農家の後継者として働く女性にクローズアップ。

あまり馴染みのない酪農家という職業についての彼女の働き方や思いについて、彼女と彼女を育て上げたご両親にお話を聞いてきました。

木目澤牧場の牛舎

福島県西白河郡泉崎村で木目澤牧場を経営する木目澤(きめざわ)さんご家族。道路沿いから望める牧場では、牛たちが自由に過ごし、とても和やかな時間が流れています。

牧場で過ごす長女の初実(はつみ)さんの思いとは。まずは就農するきっかけについて伺ってみました。

 

就農したのはやっぱり牛が好きだから

木目澤牧場の初実さん

「正直に言うと小さい頃はあんまり考えてなかったですね。高校生になった頃でしょうか、何となく周りから『(酪農)やるんだよね』って言われました。私自身3姉妹の長女なので、私もそうなんだろうなと漠然と思っていたのですが、そこで確信しました。やっぱり小さい頃から牛は好きだったんですよ。だから牛に関わる仕事がしたいという思いがあったので、そのあとは自然な流れでしたね。大学もその方面を選びました。」と、初美さん。

「(実家に戻ってきたのは)正直、就活するのが面倒だから戻ってきちゃおうって気持ちもあったんですよね。帰ってきたら仕事もあるし(笑)」
照れ隠しをしながら、語ってくれました。
楽観的に見える一方で、しっかり長女という責務をこなす彼女。就農すると知った時のご両親の心境は。

木目澤牧場の久實子さん

「高校の三者面談で、どこの大学に進学するかって時に酪農学園って聞いて初めて娘の意志がわかりました。それまではずっと部活ばかりで、夏休みにお金出すからバイトしないかって時にしか牛舎に来なかったんですから(笑)」。

と笑顔で語るのは母、久實子(くみこ)さん。

木目澤牧場の次男さん

「娘がやるとなったらからには設備投資をしようという気になりましたね。自分たちだけなら、これ以上に規模を広げる必要はないのですが。今は原発事故の影響で堆肥の流通がストップし堆肥がさばけない状況にもあるので、環境や周りの地域との兼ね合いを優先し、堆肥舎を増設しているところです」。

大黒柱である次男(つぎお)さんは娘にかける思いを優しく語ってくれました。

 

両親の思いを受ける長女の展望は木目澤牧場の初実さんと牛たち

「人に怯えない牛を育てたい。誰から見ても大切に飼われているんだなって思われる酪農をやりたいですね。そしてそれが乳量として返ってきてくれたら嬉しい(笑)」

お母さんに負けないぐらいの笑顔で語る言葉からは、後継者として請け負っていく責任感が伺えました。

 

酪農という仕事について

酪農について語る初実さん

「実際に始めて思ったことは、学校で学んだことは現実と違うということ。よく聞く話でしたが、実感しました。病気の時はこんな症状が出ると大学で話は聞いていましたが、実際に生で見たわけではないのでやっぱりわからないんですよ。でも、働きながら経験を積み重ねていくことで、体調の悪い牛がわかるようになりました。そしてそれを獣医さんに診てもらってどんな病気なのか聞くことで、すり合わせていく。ここにきてやっと大学で聴いたことを繋げることができました。毎日が勉強です。あと、今まで授業だと体を動かさなかったので、非常に体力を使うんだなってのもわかりましたね」。

木目澤牧場の牛舎にいる牛と初実さん

「就農したときは、ちょうど震災の時。震災前がどうだったかは働いていないから実感がないですが、でも、牛乳を廃棄してた時はなんでやってるのかなって疑問は嫌でも生まれましたよね。そこで、どん底からのスタートだということに気付きました。この先福島で酪農をやっていくことに対して不安もやっぱりありました。それでも牛が好きだから、続けていこう、って思ったんですよ。」

木目澤牧場の木目澤さん一家

「自分がやったことに対して反応があることは達成感がありますね。生き物だから中途半端なことはできない。自分が雑にやればそれだけの結果が返ってくる。逆にちゃんとすれば、それだけの結果が付いてくる。だからこそ、ちゃんとやった時の達成感があるんです。当然のことながら言葉が通じませんから、余計に気持ちを汲み取ってあげないといけないんですよ。ちょっとした変化に気づいてあげないと、見に見えてわかった時には重篤になっていたということになりかねない。そういった環境下なので毎日同じ作業すればいい、ということはないんです。だから、日々かなり刺激的に過ごせますよ」

と、初実さん。本当に牛とこの仕事が好きなのだということが、彼女の言葉からひしひしと伝わってきます。

「たまにイライラが溜まって牛に愚痴ったりするんです。でも、聞いてくれてるなって感じる時があるんです。すごく優しさを感じるし、相手が生き物だって再認識できるんです。小さい時から育てていた牛が大きくなっていく様子は命が身近にあるということを感じ、感動するし、楽しさを感じますよ」。

また、この仕事のいいところとして、こんなことも。

「うちは朝・夕の2回、搾乳をしていますので昼間は時間に余裕があります。昼寝できるのも最高ですよ(笑)。こんな贅沢に昼間を活用できるのはこの仕事ならでは」。

木目澤さん母娘あくまでも自然体でいつつも、高い向上心を持っている初美さん。ご家族の愛と可愛い牛たちに囲まれて、これからも日々成長し続けていくのでしょう。

また数年後に変化や進展を聞きたくなるような、素敵なご家族でした。

木目澤牧場の木目澤さん

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木目澤牧場・デイリー泉崎

  • 営業時間:
  • TEL:0248-53-3607
  • 定休日:
  • アクセス:JR泉崎駅から車で約10分    東北道矢吹ICから約10分

牧場主 木目澤久實子 きめざわくみこ さん

この記事を書いた人松尾 慧

松尾 慧 某ファッション誌の編集、フリーライターを経て、株式会社トソシオに所属。 現在、Do it yourselfの精神を通して、DIYライフクリエーターが未来の暮らしの知恵を発信し共有するプラットフォーム、 DIYer(s)のエディターを担当。 プライベートは専ら日本酒探訪とフットサルに明け暮れる。

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