子どもたちに自給する力を〜自給のむらづくり。 | どっこいしょニッポン

子どもたちに自給する力を〜自給のむらづくり。

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平成元年に兵庫県から北海道豊富町に家族で移住。極貧のテント生活や幼い子どもたちとの家づくりを経て、久世牧場とチーズとジェラートの工房レティエをつくった久世薫嗣さん。

現在、牧場や工房の運営は子どもたちに任せ、福島で被災した子どもたちに救いの手を差しのべる「エベコロベツ自給のむら」の取り組みに尽力しています。

 

罪のない子どもたちに救いの手を

色紙

北海道に移住した久世さんは酪農や養鶏、養豚を手掛ける一方で、社会貢献活動にも力を注いできました。

例えば、毎年夏に開催したエベコロベツサマーキャンプ。牧場周辺に多くのキャンパーを招くこのイベントは、観光客の方々に豊富町の魅力を知って頂くという主旨の他に、隣町の幌延町の施設建設に世間の目を向けさせたい、という願いも込められていました。

さらにこうした活動はその後、チェルノブイリで被曝した子どもたちの里親になるという、久世さんの心温まる取り組みにも繋がっていきます。

久世牧場の久世さん

「経済性と便利さだけを追求しすぎた大人のツケが、罪のない子どもたちに回ってしまうなんて…。世界各地で始まっていた子どもたちの受け入れに、僕もいち早く手を上げたんです」

広大な牧草地が横たわる豊富の大地。その慈悲深い自然と久世さんら地元の方々の愛情に癒され、チェルノブイリから来たたくさんの子どもたちは、この地で健やかさと朗らかな笑顔を取り戻したのです。

 

自分はなぜ生かされたのか、その答えは……

笑っている久世牧場の久世さん

牧場に工房レティエの運営、そして社会貢献活動。忙しく働きまわる久世さんに、一昨年9月、大きな試練が訪れました。

「お腹の中に大きなガンが見つかってね。さすがの僕も覚悟したよ」

そこから四度に渡る手術。強靭だった体は藁のようにか細くなりました。

「転移も十分予想できましたが、僕は自宅療養を選んだんだ。人生の幕引きは住み慣れた家でと思ってね」

久世牧場

しかし運命の神は粋な計らいをしてくれました。最後の手術を終えると、久世さんの体はみるみる回復に向かったのです。

「なぜ僕は生かされるのか、と思いました。もしかしたら、まだ役割が残ってるのではないかとも」

久世さんは人生を振り返ります。

死の淵から生還できたのは、兵庫県時代の自給自足や豊富での家族の自活暮らしがあったから。その厳しさや貧しさが自分に「生きる力」を与えてくれたから。そこで久世さんは、はたと気づきます。自分はまだあのころの経験を次代の子どもたちに伝え遺していない……

そうだ、これが僕が生かされた理由なのだと。

 

子どもたちが自活する力を養う場を

エべコロベツ自給のむらづくりの様子

そこから久世さんは仲間やボランティアを集め、新しい取り組みを始めます。名称は、「エべコロベツ自給のむらづくり」。

子どもたちが自活する力を養う場をつくる取り組みです。

かまど

「大人は住まいや畑など最低限の用意をするだけ。ここでは子どもたちが野菜を育て、収穫します。自分の手で薪を拾い火をおこし、かまどで米を炊きます。洗濯も風呂もなにもかもを自分たちでさせます」

エべコロベツ自給のむらづくりに参加した子どもたち

自活するとは、生きるための知恵や体力を得ること。

頭を捻り道具を探し生きていくための工夫をすること。そんな日々を過ごした子どもたちは、その先の人生もたくましく生き抜くことができるでしょう。久世さんは「エべコロベツ自給のむら」でそんな体験をさせたいと願ったのです。

地元の子どもたち

初年度となった地元の子どもたち。今年は福島の子どもたちを20名ほど招きました。

組み立てた椅子

「森に行って転び、椅子を組みたてスリ傷をつくり、子供同士がケンカをし…… いいことばかりではなく、失敗やアクシデントも経験させます。大人はそれを見守る役目。そんな時間の中で子どもたちは生きる力、生き抜く術を体得していきます。子どもには本当にすごい力が備わっているんです」

調理中の久世さんと子どもたち

笑顔の久世牧場の久世さん

牧場や工房は子どもたちに任せて、これからは自給の村の活動に全精力を注ぎたいというのが久世さんの考え。

「もっとたくさんの子どもたちを呼んであげたいし、施設もまだ未完成なところも多いからね。僕は当分、あっちの世界には行けそうもないなぁ(笑)」

久世牧場

→「久世牧場」のその他の記事はこちらから。

エベコロベツ自給のむら

https://www.facebook.com/jikyuunomura.hokkaido/

  • 営業時間:要問合せ
  • TEL:
  • 定休日:要問合せ
  • アクセス:北海道天塩郡豊富町福永

この記事を書いた人有限会社シーズ

北海道札幌市で、取材編集やデザインワークに取り組むプロダクション。

インタビューやルポから、各種誌面・webサイトの企画制作などのオシゴトをアレコレと。近々、酒場にまつわる下世話なハナシをまとめた『サカバナ』という本を出版する予定。お買い求めいただいた方から「なにこれ?」と評されること、必至であります。

有限会社シーズ http://www.cs-sapporo.com/

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